医療従事者は患者の生命に直接関わるため、日々の業務において高い質の医療を提供することが求められています。しかし、今日の医療機関は経営の困難さが増しており、医療資源の効率的な利用も重要な課題となっています。特に日本の医療制度においては、患者ケアに対する報酬は診療報酬という公定価格で決定されていますが、医療資源の消費は必ずしも可視化されておらず、治療や検査などの個々の活動がどのように資源を消費しているかを明確に把握することが難しい状況です。
このような背景の中で、本研究室では、医療資源の消費や医療従事者の貢献度を可視化するためにトークンエコノミー手法を用いた研究を進めています。
トークンエコノミー手法
トークンエコノミー手法とは、経済学の理論を応用したもので、特定の行動や成果に対してトークン(代用貨幣やポイントなど)を付与します。この手法は、行動変容やモチベーションの向上を目的として様々な分野で利用されています。
トークンエコノミー手法の医療現場への応用
医療現場においてトークンエコノミー手法を導入することで、以下のような効果が期待されます。
- 医療従事者の行動変容: トークンの付与により、医療従事者は自身の行動や成果が可視化され、より効率的かつ効果的な医療サービスの提供への行動変容が予測されます。これにより医療の質や患者満足度の向上への影響も期待されます。
- 資源の適正配置: トークンを用いて資源の使用状況を可視化することで、どの診療行為や検査が多くの資源を消費しているかが明確になります。これにより、資源の適正な消費や配分が行われ、病院全体の経営効率の向上が期待されます。
本研究室では、これらの効果を最大限に引き出すため、トークンエコノミー手法の具体的な導入方法や評価基準の設定、システムの開発といった研究を進めています。今後の医療現場において、トークンエコノミー手法が医療の質向上と経営の効率化に寄与することが期待されます。