自動麻酔の高度化に向けた、手術室監視カメラ映像から手術開始を予測する手法の開発

全身麻酔用医薬品投与制御プログラム(以下、自動麻酔)の開発が進み、本邦では2023年5月よりプロモーションが開始されました。ランダム化比較試験によって麻酔科医による術中麻酔維持に対して非劣勢が示されており、今後の流通とさらなる発展が期待されます。

 しかし、制御の本質はフィードバック機構によるため、麻酔科医が実臨床で行っているような「予測と先回り」を行うことはできず、何かが起こってから後手での対応しかできません。手術の進行状況を判断し、次に起こる内容を予測することが可能になれば、現在よりも人間に近い、より安全な麻酔を実現できるようになると考えます。

 我々の研究グループでは、手術室の監視カメラ映像から手術開始時刻を予測することを研究目的としました。監視カメラ映像に映る医療者の様々な行動と手術開始時刻の関係について検証したところ、手術開始までの時間のぶれが最も少ないのは患者を清潔敷布で覆うタイミング(以下、ドレーピング)であることが明らかになったため(2022年医療情報学連合大会)、監視カメラの映像からドレーピングを検出する仕組みを模索しました。手術ベッドに対する物体認識とその周辺の色情報に着目する比較的シンプルな分類器でドレーピングを検出する方法を提案し(2024年麻酔科学会学術集会)、現在は臨床での応用可能性について研究を行っています。

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