実践的な訓練のための超音波画像に対する仮想病変の動的埋め込み

超音波診断は画像検査の主要な方法の一つであり、診断や治療、緊急時のツールとして使用されています。超音波画像には、解剖学の知識、装置の調整、アーチファクトの理解など専門的な知識が広範に必要とされます。そのため、超音波診断の質は、検査者の技術と経験に大きく依存します。

通常超音波検査の初学者は人体模型を用いたシミュレーション実習や模擬患者実習によりトレーニングを行っています。これらの訓練は実際の患者の手を煩わせずとも、臨床に近いシナリオを提供することを目的としており、教育課程において重要な役割を果たしています。人体模型は人体を模倣した素材で作られていますが、実際の病変のある患者の体を完全には再現できていません。また模擬患者は、通常病変を持っていません。よって、「実際の人体で病変を探す」という、より実践的な訓練の機会が、学習者に十分提供できないという課題があります。

本研究では、「実際の人体で病変を探す」訓練を、患者を介さずに行うことができるようにするために、人体から取得した超音波画像に画像処理技術を用いて真に迫る仮想病変を埋め込むことを提案しています。この方法により、例えば実際の病変を持たない健常者も患者としての役割を担うことができ、より現実的な訓練が可能になります。

現時点では、扱う仮想病変は、腎結石に特化しています。腎結石は腎臓に生じる疾患であり、腎臓は呼吸による位置の変化が少ない臓器であるため、研究の初期段階において扱うのに適していると判断しています。

本システムには、超音波画像内の腎臓を特定するための腎臓追跡機能と、超音波画像内に仮想腎結石を表現する機能が組み込まれています。これらの機能は、プローブの動きに連動して動く腎臓に仮想腎結石を動的に埋め込むことを可能にします。

仮想病変を用いた訓練は、従来の病変を持たない模擬患者の概念を拡張します。人体模型では行うことができなかった、個々人の体型の違いや人間の皮膚を介した病変の探索と臨床的意思決定を同時に訓練する機会を提供することで、診断能力の習熟度を高めることを目的としています。初心者の医師に貴重な経験を提供し、多様な患者への対応やプローブ操作のスキルを向上させることが期待されます。

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