【研究成果】市販スマートウォッチを用いた入院患者向け見守りシステムの院内性能評価に関する論文が掲載されました

当教室(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)の福山 啓太らの研究グループによる研究成果が、英国の総合学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
本研究は、市販のスマートウォッチとスマートフォンを組み合わせた入院患者向けの持続的モニタリングおよび位置特定システムについて、実際の病院環境における有用性を定量的に評価したものです。

 

背景と目的
現在、院内で患者の心拍数などを継続的にモニタリングする場合、患者の行動範囲は特定のベッドや病棟などに制限されます。一方で、術後回復期など院内を歩行可能な患者に対する「見守り」体制は十分とは言えず、予期せぬ急変への対応遅れが課題となっています。 近年、市販のウェアラブルデバイスの性能は向上していますが、通信環境や構造が複雑な実際の病院内において、これらの機器がどの程度正確に異常を検知できるのかに関する客観的なデータは不足していました。

 

研究手法と結果
本研究では、市販のスマートウォッチとスマートフォンを用いて、患者の心拍数と院内位置情報を継続的に医療者へ送信し、異常時(頻脈や機器の取り外し等)に医療スタッフへ自動通知するシステムを構築しました。当院において10名のボランティアを対象に実験(トレッドミル歩行、院内位置探索等)を行い、以下の性能指標を明らかにしました。
  1. 異常検知の遅延: 医療用の心電図と比較した結果、システムが頻脈を検知してスタッフに通知するまでに、中央値で3分49秒のタイムラグがあることが確認されました。
  2. 位置情報の誤差: スマートフォンによる屋内位置特定では、水平方向で中央値6.5メートルの誤差があり、階数(高度)の特定には約40メートルの系統的な誤差が見られました。
  3. 医療スタッフの到着時間: 通知を受けてから患者の元へ到着する時間は、患者との距離が1メートル離れるごとに0.78秒増加することが客観的モデルとして示されました。

 

今後の展望
本研究は、市販デバイスが医療用機器と比較して抱える通信遅延や装着状態による誤差などの課題を定量的にデータ化した点に意義があります。これにより、専門的な医療機器に依存せずとも、患者の行動を制限しない広域なモニタリングシステムの構築可能性が示されました。 今回得られた検知遅延や位置誤差、今後の大規模検証に必要なサンプルサイズ等の具体的なデータは、今後の次世代「スマート病院」に向けた見守りシステムの社会実装において、重要なベンチマークになるものと考えています。

 

論文情報
タイトル: Evaluation of Off-the-Shelf Wearable for Ambulatory Clinical Event Monitoring and Patient Localization in Hospital Settings
著者: Keita Fukuyama, Ryo Sakamoto, Koji Fujimoto, Motoo Nomura, Koichiro Kamada, Yuji Nakamoto, and Tomohiko Kuroda
掲載誌: Scientific Reports

 

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